天神さまのほそみち
2011-06-08


天神さままいりをうつした
いろあせたいちまいの写真のなかから
じっとこちらをみつめる
ひとりのこども。
かれはやがて
このおれになるのかもしれないが
おれにはならないのかもしれない。


ちかごろよくおもいだす
こどものころのこと。
ますだせんせいの
おこったまっかなかお
タアくんの
くちびるをかみしめて
なみだをこらえてるかお
ミッチの
こばなをひくつかせる
ふくれっつら
サトくんのおどけたえがお。
とおくのグランドのさざめきが
しおさいのようにきこえてくる
ひっそりとしずまりかえったごごの
ろうかをいちじんのかぜがふきぬけてゆく
まんかいのこうていのさくら
おちばするポプラのなみき。


きおくのこみちをすみずみまでたどりかえし
どれほどまぢかにけしきをよみがえらせても
あの日とは
やっぱりなにかがちがう
いや、すべてがちがう…
そりゃそうだ、
おれ、もうこどもじゃないもんな…
こどもはからだもたましいも
いつだってすりきずだらけ
あきのかぜが
ひりひりとひざっこぞうにしみたっけ。
ひりひりとせかいはうつくしく
ひりひりとせかいはざんこくで
ひりひりとかなしく
いとおしく
こどくだった。
きずをさすりながら、わらった
きずをなめながら、ないた。
それが、あるとき
まるで魔法からさめたように
きづけばふうけいは一変していた。
まいにちのようにたんけんした森のみちは
案内看板のうえでいっぽんの線になった。


天神さまのほそみちは
こどもからおとなへの一方通行
かえりのないみち。
写真のなかからこちらをみつめる
このこどもが
たとえおれだとしても
ふたりがふたたびまじわるみちはない。
だからこそ
これほどまでに
あの日々がまぶしいのだ。
[詩]

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